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Channel: 越前 ひとり山 ある記
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思い出の雲ノ平周回 '05.8.13-16

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 ごちゃごちゃと汚い字が書き込まれた登山地図のコピーが、部屋の思いがけないところから出てきた。
それは八年間も行方不明となっていた山を始めた頃の私の山行記録、生涯初の北アルプスの記録だった。懐かしさのあまり時間を忘れて読みふけった。そして次から次へと記憶が甦ってきた。
 
そうそう、雨にはたたられたよな~。四日間、槍ヶ岳の姿はとうとう一度も見せてもらえなかった。
でも初めての北アルプス! 初めての山小屋泊! 初めての縦走! 初めての雨中山行! 初めての・・・
もう、何でもかんでもが初めて尽くし! 
見ること・聞くこと・感じること、すべて全~んぶが新鮮で楽しかった。わくわく・どきどきの四日間・・・もう一度あの日に戻れないかなぁ~・・・。
 
というコトで、ブログ開始前のアナログ記録をデジタル化するというもっともらしい理由で (^^; 八年前の山行記録をブログの記事としてアップ致します。
【尚、画像データはパソコンの入れ替え時に消失という情けない事になっております。あしからず。】
 画像なしのかなりの長文となります。暇つぶし程度なら役に立つかな?.
 
8/13   雨       折立(15:10)-(18:20)太郎平小屋
8/14   雨時々晴   太郎平小屋(6:50)-(11:03)黒部五郎岳-(15:45)三俣山荘-(18:15)水晶小屋
8/15   曇のち雨     水晶小屋(5:15)-(10:00)高天ヶ原温泉-(14:33)祖母岳-(16:30)薬師沢小屋
8/16   晴       薬師沢小屋(5:30)-(10:17)薬師岳-(16:30)折立
 
 
初日
午前の用事を済ませ、曇り空の折立へと着いたのは午後二時前だったろうか。
ひとしきり持っていくものと置いていくものの最終選考に悩む。そしてパンパンになった30ℓザックを担いだのは結局三時を回ってから。出発が遅くなってしまったが何とか暗くなる前には太郎平小屋へ着けるだろう。
さあ、いよいよ日本最後の秘境と呼ばれる雲ノ平へ向かってGOだ!.
 
小雨は降ったりやんだりだが、登りが緩やかになり木道となるころから稲光が近づいてきた。
これまで日帰りの山しか行ったことなかったので、まず雨に遭うこともなかった。
山小屋へ向かう足も自然と速くなったようだ、三時間少々で到着となる。窓からの外は雷雨となっている、危なかった。
 
初めての山小屋の受付を済ませ、部屋を案内してもらう。お盆休みでも天井裏部屋ならまだ空きがあるほどだった。
みんな大ベテランに見える先輩方に挨拶をする。隣の人に初めての北アでどう回ったらいいか分からずに困っていると相談したら、最終的には近くの四・五人が私の登山地図のまわりに集まってきて、ワイワイ言いながらいろいろと教えてくれた。
 
二日目
山小屋での要領が分からず、なんでまたこんな早い時間からの朝食なんだと不思議だったが、あれよあれよという間にみんなが小屋を出発していく。またもやパッキングに手間取っていた私が小屋を出たのはもう七時前だった。
 
皆さんのアドバイスで今日の目的地は三俣山荘。雲ノ平もいいが四日間もあるなら山へも登っておけとのご意見で、まずは黒部五郎岳というなんか人の名前みたいな山へ向かう。百名山のひとつだそうだ。
小屋を出るときには晴れ間も見えたが、やはり降ってきた。ただでさえ暑いのに合羽は嫌いだ~。
 
ガスで視界がないときは足元のちっちゃな花、展望が得られるようになるとこれもさっぱり名前は判らないが見事な山々の姿に癒されながらのアップダウンの稜線歩きだ。
二日目ということも有りだいぶ足にキたな~と思う頃に、とどめの黒部五郎の急登が雲の切れ間の青空をバックに待ち受けていた。「う、嘘だろ~アレ、登るんかいな~?」
 
合羽を脱いで登れるのがせめてもの救いだ。意を決して渋々登り始めるが休んでばかり。と、下から小さな女の子がお母さんの手を引きながら何人もの人を抜いて登ってきた! それも「も~暑いわね~」とかなんとかずっとお母さんに文句を言いながらだ。聞けばまだ五歳だという・・・。もちろん私も道を譲った。
 
黒部五郎の肩までやっとこさ登り大休憩とする。近くの二人パーティの一人が小さく「あっ」と驚いていた。見れば登山靴の底が見事に剥がれおちていた。「また巻き直しだ」ということは、ここまでもだましだまし来たのだろう。
ザックをデポして、累々と石ころが堆積して異様に見えた山頂はそこからひと登りだった。青空も見えるが、期待した槍ヶ岳の姿はのぞめなかった。ここで生まれて初めての雷鳥を見たが、人にあっちに雷鳥がいましたよと教えても、「そうですか」の一言で終えられ、興奮していた自分が恥ずかしく思えた。
 
またもや土砂降りの雨の中を、有名らしいカール地形のルートで黒部五郎小屋へと向かった。
水が豊富らしい小屋前の水桶に浮かんだ冷たいコーラがとてもうまかった。
途中の巻き道で、直角に上へと曲がり登る登山道に対応しきれず、付近をうろうろ。だいぶ焦ってしまった。
 
三俣山荘には思いのほか早く着いた。ならば晴れ間もあるうちにこのまま水晶小屋まで向かうとしよう。
しかし鷲羽の急登で雨風が強まってきた。ピーク直前で雷鳥の美声?が聞こえ始めたと思ったら、ガラガラっと小さな落石の音とともにその美声が騒がしくなり、雷鳥の姿が飛び跳ねる。今の落石を起こしたのは君たちだったのか?
 
風雨の鷲羽山頂を過ぎて下っていくが、フードの中の狭い視界の中で登山道がわかりづらくなることもあった。そこへまたもや雷鳥君の姿が。ね~、先を急いでいるんだけど、そこどいてくれないかな~。近寄っていくとトコトコ道を歩いていく。まるで私を先導しながら歩いているようだったが、いきなり羽を広げて下へと飛んで行ってしまった。そっか~、ニワトリとは違うんだった、雷鳥って飛べるんだよな~。
 
ガス・風・雨の三重奏の中、登山道の向こうから発電機の音が聞こえ始めたと思ったら、水晶小屋が姿を現し一安心。
が、玄関を開けると中は大人数の泊まり客! 「北アルプスで一番小さな小屋」がキャッチフレーズの小屋に年に一度あるかないかの人数だったらしい。そして私のあとにも女性二人パーティが入ってきた。積み上げられたザックの高さも半端ない。上がりなさいと言われたが私は玄関の土間にツェルトを敷きシュラフを出して寝ることにした。当然キャパオーバーとなっている小屋の食事も遠慮してラーメンを作って済ませた。外は大荒れの嵐となってきた。外トイレに出る女性の悲鳴が痛々しい。寝る時は毛布を二枚借りれたので寒くはなく、もしかしたら小屋で寝返りが打てた唯一の人間だったかもしれない。夜中にふと目を覚ますと、おじさんが土間のすきまに座っていた。「こりゃ眠れたもんじゃないわな」
 
三日目
玄関の土間で一晩を過ごした水晶小屋からは、明るくなるのを待ちかねての出発だ。幸い嵐は風だけが残っているだけだ。しかし早朝の寒さと強風に初めてといっていい岩場、肝心なところで小雨も降ってくる悪条件に水晶岳越えは思いのほか大変な目にあった。しかしピークを越えてからは薄日も差してきたので、風のないお花畑に囲まれた場所で朝食とした。つい二年前までは全く花には縁がなかった身だが、あの嵐をも乗り切った可憐な高山植物には感動だ。
 
赤牛岳への稜線分岐から高天ヶ原へと下降だ。地図には熟達者向きとあるが、どんな道なんだろう?
はじめは雲ノ平を眺めながらのザレた道から、周りの樹高がどんどん高くなりカラマツの森を抜けるようになる。そして沢へと出た。えっと~、登山道ってこの丸石ゴロゴロの河原を下ればいいのかな~? 下り始めてすぐにご夫婦らしい二人が登ってきた。このまま下れば露天風呂だと言われて心強くなる。こちらは登り口の場所を教えた。
 
おそらく雨が小康状態ということで、ペンキマークをたどって素人でも下れる水量だったのだろうが、ペンキマークは何度も渡渉を繰り返す。おかげで登山靴の中は水浸しだ。なんとなく硫黄臭くなってきたなと思って川の水をさわると温かい。そこからすぐに掘っ立て小屋の露天風呂が見えた。有難くお風呂を頂戴していると、若いアベックがやってきた。ふたりは対岸の小風呂へと渡り水着での入浴、うらやましくも目の毒だ・・・おっちゃんは早々に退散するとしようか。
 
河原から高天原山荘への登り口がわからずに手間取ってしまった。これからいよいよ雲ノ平へと進むことになる。
お昼にはまた雨がひどくなってきた。高天原峠を過ぎたころからは土砂降りが続く。登山道はすでに川と化していたが坂道では当然「滝」となっていて、増水した川の橋渡りとともにけっこう怖い思いをした筈だが、さすがに秘境だと叫びながらスリルを楽しんでいたような気もする。
 
雲ノ平山荘への道は思っていたような高原の平坦な道だけではなかった。細かくもアップダウンがあり、それだけに単調な景色とはならなかった。林から湿原、草原や岩場が入れ替わる。ガスがなければ雲ノ平を囲む山々の遠景が素晴らしいのだろう。雲ノ平山荘に着くころには雨もかなり弱まっていた。いろいろな「庭園」を見て回ろうかとも思っていたがガスの中では面白くない。ここは先へと進んでおいて、予定外ではあるが明日は薬師岳へ登るとしよう。
 
それでも「庭園」はギリシャと祖母岳のアルプス、シラビソ林のアラスカの三つは通ることが出来た。しかしその感想は微妙・・・。木道が終わると雲ノ平の縁から黒部川へ向かっての急下降がはじまる。なかなかの激下りだ。雨上がりのつるつるの丸石がいやらしい。途中で30人もの団体さんに追いついてしまう。すぐさま最後尾からストップの指示が飛ぶ。有難いけど申し訳ないので急いで通過しようとしたが、悪路には本当に参った。
 
対岸の薬師沢小屋へは吊り橋を渡っていくのだが、その橋までの河原道が変に歩きにくい。後で聞くと増水で通常の道が水没していたらしい。しかし流石に黒部源流域、追い越した30人の団体さんが到着したころにはもう減水していて、ラクそうに歩いていた。
 
最終日
やっとまともに晴れてくれそうな一日が始まった。おかげで今日こそは槍ヶ岳が見れそうだ。
青空の下を太郎平小屋へと駆け上がる(って、走ってないけど)。ザックをデポして、さあこの山行四つ目の百名山、薬師岳へ向かうぞ~。まだ朝の雲が残っていて槍は見えない。いったん下ってテン場を過ぎるころから日差しに暑さを感じ始めた。しかし合羽を脱いで登山道を歩けるコトがこんなに幸せだとは・・・
 
樹林帯を過ぎて大展望も思いのままだ。足元の有峰湖や太郎平小屋、一昨日登った黒部五郎が遠くで立派に見えた。実はガスの中で頑張って登ったはずの鷲羽や水晶なんかも含めて、あとはよくわかりませ~ん!
けど、そんな名前なんかど~でもいい素晴らしい景色に、思わずヤッホッ~~って叫んでしまいそうだ。
 
ガレガレの登山道を、空荷の身軽さと快晴の天気に足取りは軽い。ぐんぐん青空の下の山頂が迫ってくる。正体不明?の建物を過ぎるとそこは山頂だった。カールには残雪も見える。が、肝心の槍ヶ岳が見えない!
写真を撮ったり、しゃべったりしながら 1: 40 も粘ってみたが、ダメだった。雨の雲ノ平には悔しいとかイヤだとかは全然思わなかったが、ここまで来て槍の姿が見れないのは物凄く悔しく感じた。
 
あ~あ、初めて尽くしでとても楽しかった四日間も今日でもう終わりだ。
思い出をかみしめながらの下山となった。
よ~し、次は槍ヶ岳だな~ ♪
 
 

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